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02年海兵隊移転訓練情報B

ルポルタージュ 訓練公開に立ち会って 

中村忠士(別海町連絡会事務局・別海町議会議員)  

 9月17日午後1時、私たち、町の職員や議員を乗せた自衛隊の軍用トラックは演習場内にある敞舎前駐車場を出発した。前回(00年)の演習公開時には、一応マイクロバス(やはり自衛隊)が用意され、それに乗って移動したのだが、今回は違う。雨天が続き道が悪くなっているからとのこと。戦場に向かう兵士か、捕虜になった気分がしてくる。

 十数分で目的地、着弾地から14キロメートル離れた砲撃地に着く。海兵隊が「GPカウボーイ」と呼んでいる地点だった。バスから降りて陣地に行きかけると、予告なしで3連射が5回繰り返された。空気を裂く重い砲声が鼓膜を震わせる。いきなりやられると心臓にまで響く。えらく威勢がいい。

 砲撃が一段落すると、レーダーや指揮所、そして、砲座、そこで訓練する兵士たちの動きなど説明つきで案内される。質問したり説明を聞くのは同僚の吉野宮子議員に任せて、わたしはもっぱら写真撮影を担当。広い平地に155ミリ榴弾砲が20〜30m間隔で3門並び、その周辺に砲弾の格納所や指揮所のテント、輸送用のジープなどが迷彩を施した網に覆われてあった。高さ4〜5mのアンテナが数本立つ。こうしたハイテクが「正確な人殺し」を可能にしていく。一通りの説明が終わると、再び砲撃が始まった。今度は3連射が4回繰り返された。たいした「歓迎ぶり」だ。

 砲座から離れて今度は直径1mほどの観測用気球を上空に飛ばすところを見る。風向、風速、気温、気圧などを測り、正確な砲撃に役立てるとのこと。「弾道は今日くらいの風だとどの程度の誤差が生じるか」という質問に、ラングレー指揮官は、10〜20mの誤差が生じる。それを計算にいれて撃つのだと説明した。

 GPカウボーイの視察を終えると、私たちは20分ほどまたトラックにゆられて、着弾監視場の1つ、山吹台に移動した。着弾地点から5kmほど離れた高台だ。着弾の様子を見ながら、私たち共産党の議員はいろいろな質問をした。重要なことがいくつかわかったが、その中で最も重要だと思えるのは、今回の訓練の質にかかわることだった。それは、浜中町の加藤町議の質問に対してだった。

 加藤「ここでは若い新兵を中心にした基本的訓練を行っているのか?」

 ラングレー「基本訓練ではない。即応態勢を保つための訓練だ。若い兵士もいるが、資格も技量も十分に達しているからこちらに連れてきているのだ。技量が未熟なものは連れてこない。」

 技量の未熟な者は連れてきていない、だから町民にとって危険はない・・・ということを強調したかったのかもしれない。もしかして、そういうふうに思わせるためにうそを言っているのかもしれない。が、私はラングレーの目を見ながら話を聞いた。本当のことのように思う。だからこそ余計に重要だと思った。即応態勢を保つ。つまり、ここでの訓練がイラクやアフガンなどの戦争に直結して行く可能性が極めて大きいということではないか。

 黒人のラングレーの目は、むしろ落ち着いた静けさがあり、まじめそうで好感が持てた。が、彼の左胸のホルダーから見えた大型の短銃の台尻は、塗装がはげ傷だらけだった。彼に対する一種の好感と、軍隊に対する深い恐怖が同時にこみ上げてきた。いったん止みかけていた雨が突然激しく降り始めた。

155ミリ榴弾砲 ラングレー司令官(右2人目)と通訳 気球を上げる兵士
連続射撃する砲撃隊